キャンプ写真入門:星空の撮影方法

へり

2016年12月17日 18:30

 星空の撮影方法を解説する記事はWeb上にごまんとあるが、テントと星空を同時に撮影する方法を解説する記事は少ないと思う。

 ここ最近のカメラはエントリークラスのカメラでも高ISO感度ノイズが少なくなっているので星空撮影はとても簡単である。一度撮れてしまえば毎回撮れるようになる。補助輪の無い自転車に初めて乗れた時のような感覚を是非知ってほしい。



今回のエントリーはスマホの画面じゃ星が見えないのでPCで観覧頂ければ幸いです。



1.準備物
・長時間露光が可能なカメラ。一眼レフかミラーレスが一般的。
 最近のカメラならエントリークラスの一眼レフで問題無い。

 ISO感度3200程度でノイズが目立たない機種がベスト。レンズはできればF値が小さくて10mm程度の広角レンズがあれば構図が楽だが、F3.5 18mmのキットレンズでも十分撮影可能。

・三脚
 絶対必須。カメラとレンズの重量にあった頑丈な物を。

 三脚は安物買いの銭失いになりやすい製品だが、高価なものが良いとも限らない非常に選択の難しい製品。自分のカメラとレンズの相性をカメラ屋さんとよく相談しよう。

・レリーズ
 あると便利だが無くても可。無い場合はセルフタイマーで撮影する。




2.撮影環境
 星空撮影で最も重要なのは、テクニックでも、道具でも無く、ロケーションである。光りの少ない場所で撮影しないと星は写らない。最も邪魔な光は月。月明かりの少ない事が大前提になる。


  一ヶ月に一度、全く月明かりの無い「新月」の夜があるが、この前後数日間で撮るのがおすすめ。また新月じゃなければ撮れない訳ではなく、月にも太陽と同じく「月の出」と「月の入り」時間があるので、空に月が無い時間を選ぶ。月入り後も数時間経たたないと明かりは写ってしまうので注意が必要。

この月の明るさを知る月齢カレンダーはiOSでもアンドロイドでも無料アプリが豊富にあるのでインストールしておくと便利。下のアプリはアンドロイド版「シンプル月齢カレンダー」月の出入り時間も確認できて便利(無料アプリ)



 また可能な限りキャンプ場に照明が無い方が望ましい。(この情報入手がなかなか難しい。。。)ランタンの明かりを消したら自分の手も見えない程の真っ暗な環境が星空撮影には理想的。



3.カメラの設定
 いろいろ読むのが面倒だと思うので最初に書くと、私の露出は月明かりの無い暗い環境で、マニュアルモードF2.8 SS20秒 ISO3200。絞り開放F値がF3.5のレンズなら F3.5 SS30秒 ISO3200辺りで撮影可能だと思われる。



以下その設定根拠


①撮影モード
 暗い星空の露出をカメラはオートで決定する事が出来ない。マニュアル撮影モードにする。
 絞り、シャッター速度、ISO感度を自分で決める必要がある。


②絞り
 星とレンズが途方も無い距離関係なので、絞りを開けようが閉じようが被写界深度(ボケ具合)には全く影響が無い。ISO感度を可能な限り下げる為、絞りは開放(小さなF値)にする。多くのキットレンズは絞り開放F3.5だと思うのでF3.5にする。


③シャッター速度
 考え方がやや難しいのがシャッター速度(SS)である。地球は自転しているのでSSを長くすると星は流れてしまい点ではなく線になってしまう。けれどもSSは出来るだけ長くした方が星が多く写る。ISO感度を極端に上げてSSを短くする方法もあるが、この見極めが難しい。

同じシャッター速度で撮影した場合下記の特徴がある。

・広角レンズだと流れづらい。望遠レンズだと流れやすい。
・北極星の周辺は流れづらい。北極星から離れると円周運動が早く流れやすい。

で、私のおすすめはSS20秒と30秒を試すこと。20秒、30秒をそれぞれ撮っておくのをおススメしておきたい。1/20、1/30じゃない事に注意。


④ISO感度
 絞り開放、SS30秒、あとはISO感度を決定する。上げれば上げる程ノイズが多くなるのでISO感度は上げたくないが、星空はISO感度を上げないと写らない。自分の場合はCanonのカメラが適正露出と判定する±0EVに対して+1EV~+2EVの範囲で撮っている。Mモードでファインダー内の画面でEV値が確認できるので、+2EVになるまでISO感度を上げる。明かりが無く条件の良い暗い夜なら大抵ISO3200近辺になる。


 空はやや白っぽく写るが+EV側にした方が星が多く写り、後々RAW現像の作業も楽だと思う。(写っていない星を再現するのは困難だが、写っている星を少なくするのは簡単)


まとめると、星空撮影の露出の基本は、絞り開放F3.5 SS30秒 ISO 3200で撮影を開始し、そこから星空の写り具合を見て、SS20秒にしたり、ISO1600~6400の範囲で調整を行う。


⑤ホワイトバランス
 星空撮影にはホワイトバランス(WB)の調整が欠かせない。通常はオートで問題無いが、黒い空が黒く写る。当たり前の事だが、「白熱電球」や「白色蛍光灯」にすると空が青くなる。幻想的な絵になる場合が多いので「白熱電球」がおすすめ。

WB:「太陽光」


WB:「白熱電球」


WB:「白色蛍光灯」


 撮影中に写真を確認しながらWBを調整するのは面倒で撮影枚数を増やしてしまうので「RAW」で撮影しておき、後からPCで変更した方が効率がいい。ちなみに私はPCでできる変更はカメラ本体では行わずPCで処理している。WB変更、ピクチャスタイル変更などカメラ側では操作しない。



⑥ピント合わせ
 カメラのオートフォーカスは星にピントを合わせる事ができない。従ってマニュアルフォーカスで撮影する。レンズはMFにする。



 ライブビュー機能で星を拡大して、フォーカスリングをミリ単位で廻して・・・という方法を行っている方をよく見るが、その方法でピントが合ったレンズの位置は100%無限遠∞のハズである。

レンズと星の途方も無い距離関係、無限遠以内の範囲でピントが合うハズが無いのである。

 従って星のピント合わせにファインダーを覗いたり、液晶画面を見たりする必要は無い。予めレンズのメモリを見て無限遠に合わせる。これで星にピントは合う。(フォーカスリングを廻し切った所では無い事に注意。メモリをしっかり合わせる。)




ちなみに私は星空撮影の時間はほぼ泥酔状態である。ややこしいピント合わせはそもそも不可能なのだ。

⑦手振れ補正機能をOFFにする
 カメラによってレンズ内に手振れ補正機能が入っているもの、ボディ内に入っているもの様々だが、手振れ補正の類は必ずOFFにする。ONにしておくと、星が渦巻き状の模様になってしまう。






4.テントの設定
①テントとカメラの距離を確保する
 日が暮れる前にやっておく事がある。カメラはレンズと被写体の距離が近いと、ピントを合わせなければならないが、ある一定以上離れると無限遠∞でピントが合う範囲になる。星は前述の通り無限遠で撮影する為、テントも無限遠でピントの合う位置を把握しておく。

 具体的にはマニュアルフォーカスにして無限遠の位置にピントを合わせ、絞り開放(小さなF値)、テントを撮影してテントがピンボケしない距離を探しておく。

 この距離はレンズによって異なり、一般的にはレンズの焦点距離×1000倍とされ、広角レンズは短距離、望遠レンズは長距離である。この距離の歩幅が何歩だったか記憶しておくと撮影時に便利。

これで星にもテントにもピントを合わせる事が出来る。慣れてくれば「このレンズならだいたいこの辺り」というのが分かってくる。



②テントの明るさ
 星空撮影は前述の通り20sec~30sec程度シャッターを開くので、ランタンでサイトを明るく照らしておくと、テント廻りは簡単に露出オーバーになり、真っ白になってしまう。

 テントと星空を一緒に撮るケースではこのランタンの光の調整が難しい。ランタンは消してしまう方が撮影は簡単なのだが、それだとキャンプしている感がやや足りない写真になってしまう。

 なので出来る限りランタンの光を暗くする。暗い光りを出せるランタンというのは極めて少ないが、おすすめ製品としてはスノーピークのたねほおずき。このLEDランタンは無段階に光の調整ができるのだが、たねほおずきの最も小さくした光をテント内に照らしておくぐらいがSS30秒には最適だと思う。



または、ペトロマックスHL1等のオイルランプが消えるか消えないかギリギリの光もなかなか良い感じになる。




コールマンのノーススターで煌々と照らしているようなサイトは間違い無く真っ白になってしまうので注意が必要だ。せっかく購入した200Aも光量調整できないので、使わなくなってしまったのはここに理由がある。



3.その他
ソフトフィルターの効果
 星空撮影ではレンズにソフトフィルターを付けると星が大きく写る為、Kenko PRO SOFTON[A]などが星撮りの常用アイテムとなっている。


しかしテントと一緒に撮るとテントの明かりがボケたような描画になるので、締まらない写真になり易く、テントやランタンと一緒に撮るなら使わない方が無難だ。

この辺りはご自身の好みに応じてどうぞ。

PRO SOFTON[A]未使用
星が小さいがテントはくっきり写っている。



PRO SOFTON[A]使用
星が大きく写るがテントはボケた描写になってしまう。




下の写真は霧が出ている状態で撮影した星空。霧がフィルターと同等の効果になり星が大きく写るケースもある。



4.撮影方法
 上記4の①で決めたテントとカメラの距離を確保して三脚でしっかりカメラを固定、星空とテントに向かって構図を決める。シャッターボタンを指で押すとほぼ全ての写真がピンボケする。20~30秒シャッターを開けるので、わずかな揺れが致命的になる。必ずレリーズかセルフタイマーを使うようにしよう。


5.失敗事例集
 星空はきっちり撮れているが、「月の入り」したばかりの時間で地上面が明るい。またテント上部の明かりが明るすぎ、テントが白飛びしている。



星は撮れているが、ランタンが明るすぎ、サイトが白飛び。



星空にフォーカスは合っているがテントとレンズが近すぎ、テントがピンボケ



風が強くてピンボケ。地面が柔らかいキャンプ場だとなかなか難しい。



月明かりが明るく、同じ露出で撮っているのに星が写らない。この写真はPRO SOFTON[A]使用、ややむりやり感が出てしまった。



キャンプ場の照明が明るく星が写らない。


左下に焚火の明かりが写ってしまった。


と、えらそうに解説記事書いているが、なかなか上手く撮れたためしが無いのであった。。。



 さて、星空を撮る目的でキャンプをすると、驚くほど日本の空は星空に恵まれない事に気付くだろう。春夏は大気が湿って、秋は天気が崩れ、撮りたくなる程の星空にはなかなか恵まれない。しかも月明かりの無い週末を選ぶ必要がある。


星空写真で最も難しいのは美しい星空に出会う事なのである。









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