1978年のキャンプ
先日久しぶりに雨天のキャンプを行って、瞬きするような一瞬の速度で思い出したことがある。この文章は長くなる。たぶん。
自分が初めてキャンプに行ったのは親に連れられて7歳の時、1978年。場所は栃木県の中禅寺湖 菖蒲ヶ浜キャンプ場。既にコールマンのバーナーやランタンなどは海の向こうに存在していたが、まだ日本には入ってきていなかった。(入っていたかも知れないがウチには無かった。)
モンベルのムーンライトさえ発売されておらず、三角形のオレンジ色のテントが主流で、アウトドア専用の調理器具といえば「飯ごう」だけ、ライトはオイルランプと懐中電灯だけだった。
テントの加水分解の匂いがキツかった事を子供心に憶えている。古くなったMSRのテントと同じ鼻を突く嫌な匂い。でもあの臭いは小学生の自分にとってキャンプそのものの匂いだったのである。

当時の私が家族から割り当てられた重要な役割りは火を起こす事だったが、バーナーも無いので焚き火だけで全ての料理を調理する事になる。着火材も無かった当時の状況で小学生が火を起こすのは大変だ。
新聞紙やガムテープを使って小枝から小さな火を起こし、順にマキを大きくしていく手順を踏まないと決して火は起こせない。マキを細かくする為のナタは当時必需品だった。そしてどんなに手間取っても父親は絶対に手伝ってくれなかった。
新聞紙を濡らしてしまう事、また使い切ってしまう事はその日、火を起こせない事を意味する。ただし当時は火種を分けてくれるキャンパーが多かったのだが。ウチのサイトにも「火種くれませんかー」なんて後から飯を炊くキャンパーもたくさん来た。自分が起こした火を他の誰かが使ってくれるのが妙に嬉しかったものである。
そして飯ごうでのご飯炊き。親父は飯ごうを使ったご飯炊きに拘っていて、例の「はじめちょろちょろなかっぱっぱ~」の如く、マキの量とウチワで火力調整し、匂いで炊き加減を判断して飯ごうをおろした後、その残り火でカレーだのシチューだのハンバーグだのを作る。食事が終わると、更に残り火でキャンプファイヤーになるのだった。
アウトドア専用の用品が少ないので荷物は少ないと思いきや、殆どの道具を家庭で使っている用品を代用するので携帯性が悪く、かえって大荷物だった。親父の車は荷室もルーフ上も夜逃げするような荷物だった。
あの頃の不便を楽しむキャンプがもの凄く好きだった。毎回家族と行く度にわくわくしたものだった。父親が、太陽に当てた鉄板だけで火を使わずに目玉焼きを作ったり、ロープワークを駆使してただのシートをタープにしてしまう姿はとても頼もしく見えた。(父親は自在金具さえ使うのを嫌い、テントの張りは自在結びだけで仕上げていた。)
たいした事でもないのに父親が言った事は子供に大きく影響してしまう。雨天のキャンプが嫌いじゃない事も「テントに当る雨の音が好きだ」と言った父親からの影響だ。
そんな親父は自分が高校3年の時42歳の若さで逝ってしまった。そして昨年自分は同い年になった。
少年の自分が感じたわくわくを、自分の子供にもキャンプを通して体験させてあげられたかどうかは分からない。現在の便利グッズ満載のキャンプは、不便を解決して見せるチャンスも無く、自分が親父から受けたほどの影響は子に与えていないだろう。
ためしにチャコールスターターと着火剤を使わず、息子に焚き火を炊かせてみようか?全てのアウトドア用品を使いこなせる息子にとっては意味不明な行為だ。しかもその火種を頼りに訪れるキャンパーももはや居まい。
駄文失礼
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モンベルのムーンライトさえ発売されておらず、三角形のオレンジ色のテントが主流で、アウトドア専用の調理器具といえば「飯ごう」だけ、ライトはオイルランプと懐中電灯だけだった。
テントの加水分解の匂いがキツかった事を子供心に憶えている。古くなったMSRのテントと同じ鼻を突く嫌な匂い。でもあの臭いは小学生の自分にとってキャンプそのものの匂いだったのである。
弟と一緒に。写真の裏にはS53-8-15菖蒲ヶ浜と母親の手書きがあった。

当時の私が家族から割り当てられた重要な役割りは火を起こす事だったが、バーナーも無いので焚き火だけで全ての料理を調理する事になる。着火材も無かった当時の状況で小学生が火を起こすのは大変だ。
新聞紙やガムテープを使って小枝から小さな火を起こし、順にマキを大きくしていく手順を踏まないと決して火は起こせない。マキを細かくする為のナタは当時必需品だった。そしてどんなに手間取っても父親は絶対に手伝ってくれなかった。
新聞紙を濡らしてしまう事、また使い切ってしまう事はその日、火を起こせない事を意味する。ただし当時は火種を分けてくれるキャンパーが多かったのだが。ウチのサイトにも「火種くれませんかー」なんて後から飯を炊くキャンパーもたくさん来た。自分が起こした火を他の誰かが使ってくれるのが妙に嬉しかったものである。
そして飯ごうでのご飯炊き。親父は飯ごうを使ったご飯炊きに拘っていて、例の「はじめちょろちょろなかっぱっぱ~」の如く、マキの量とウチワで火力調整し、匂いで炊き加減を判断して飯ごうをおろした後、その残り火でカレーだのシチューだのハンバーグだのを作る。食事が終わると、更に残り火でキャンプファイヤーになるのだった。
アウトドア専用の用品が少ないので荷物は少ないと思いきや、殆どの道具を家庭で使っている用品を代用するので携帯性が悪く、かえって大荷物だった。親父の車は荷室もルーフ上も夜逃げするような荷物だった。
あの頃の不便を楽しむキャンプがもの凄く好きだった。毎回家族と行く度にわくわくしたものだった。父親が、太陽に当てた鉄板だけで火を使わずに目玉焼きを作ったり、ロープワークを駆使してただのシートをタープにしてしまう姿はとても頼もしく見えた。(父親は自在金具さえ使うのを嫌い、テントの張りは自在結びだけで仕上げていた。)
たいした事でもないのに父親が言った事は子供に大きく影響してしまう。雨天のキャンプが嫌いじゃない事も「テントに当る雨の音が好きだ」と言った父親からの影響だ。
そんな親父は自分が高校3年の時42歳の若さで逝ってしまった。そして昨年自分は同い年になった。
少年の自分が感じたわくわくを、自分の子供にもキャンプを通して体験させてあげられたかどうかは分からない。現在の便利グッズ満載のキャンプは、不便を解決して見せるチャンスも無く、自分が親父から受けたほどの影響は子に与えていないだろう。
ためしにチャコールスターターと着火剤を使わず、息子に焚き火を炊かせてみようか?全てのアウトドア用品を使いこなせる息子にとっては意味不明な行為だ。しかもその火種を頼りに訪れるキャンパーももはや居まい。
駄文失礼
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この記事へのコメント
こんばんは。
なんとなくこの記事に吸い寄せられました。
へりさんのおやじさん、今の僕が理想とする父親像じゃないかと・・・
今度実践してみようと思います・・・
なんとなくこの記事に吸い寄せられました。
へりさんのおやじさん、今の僕が理想とする父親像じゃないかと・・・
今度実践してみようと思います・・・
orangesly0710さん
もう親父の顔を思い出せないのですが、早くに死なれたので良い思い出しか残ってないんですよね。死人はずるいです。
理想の父親とは違う気がしますね。基本放置プレイだったので。
でも気が長くて、よくいろんな局面で待ってくれたと思います。
焚き火起すのに1時間や2時間待てますか?きっとそんなレベルだったと思います。自分も毎回火起すの必死でした。
中学校の時に知った着火材。もう魔法かと思いましたよw
もう親父の顔を思い出せないのですが、早くに死なれたので良い思い出しか残ってないんですよね。死人はずるいです。
理想の父親とは違う気がしますね。基本放置プレイだったので。
でも気が長くて、よくいろんな局面で待ってくれたと思います。
焚き火起すのに1時間や2時間待てますか?きっとそんなレベルだったと思います。自分も毎回火起すの必死でした。
中学校の時に知った着火材。もう魔法かと思いましたよw
初めまして!
お邪魔します!
黄色の三角テント懐かしいです!
へりさん程では無いですが小さい頃に
今では考えられない程、何も無い所に連れていかれ
石で釜戸を作り、そこら辺から薪を拾い
生木を持って帰っては怒られた事を思い出します(笑)
キャンプの楽しさって知恵で不便を克服する事と
自分のスキルで周りに認めて貰える(頼って貰える)嬉しさを
体感出来る所と、それに失敗しても
取り返しがギリギリ付く安心感で楽しめてたのを思い出しました〜!
※ただ、野生の猿を覗き込んで追いかけ回された母親だけはトラウマです(笑)
お邪魔します!
黄色の三角テント懐かしいです!
へりさん程では無いですが小さい頃に
今では考えられない程、何も無い所に連れていかれ
石で釜戸を作り、そこら辺から薪を拾い
生木を持って帰っては怒られた事を思い出します(笑)
キャンプの楽しさって知恵で不便を克服する事と
自分のスキルで周りに認めて貰える(頼って貰える)嬉しさを
体感出来る所と、それに失敗しても
取り返しがギリギリ付く安心感で楽しめてたのを思い出しました〜!
※ただ、野生の猿を覗き込んで追いかけ回された母親だけはトラウマです(笑)
虫けらさん
初めましてコメントありがとうございます!
キャンプの楽しさ、おっしゃる通りだと思います。一つ何かを任せる、権限移譲する。会社の部下にしても、子供にしても責任与えれば人は育つと思うんです。子連れのキャンプは手軽にそれを実現できる場だと思います。
しかし私はこの頃の火の管理を任されたのがややトラウマであり、着火剤が手放せませんw
バトニングとかしてわざわざ不便な着火を楽しむ人が居ますが、私には考えられませんわw
初めましてコメントありがとうございます!
キャンプの楽しさ、おっしゃる通りだと思います。一つ何かを任せる、権限移譲する。会社の部下にしても、子供にしても責任与えれば人は育つと思うんです。子連れのキャンプは手軽にそれを実現できる場だと思います。
しかし私はこの頃の火の管理を任されたのがややトラウマであり、着火剤が手放せませんw
バトニングとかしてわざわざ不便な着火を楽しむ人が居ますが、私には考えられませんわw
はじめまして。
なななんと申します。
キャンプで星空を撮りたいなと思い、「キャンプ写真入門:星空の撮影方法」が検索で出てきたので拝見させていただきました。
そこから・・・ひとつひとつ丁寧に説明された他の記事を読ませていただきながら、この「1978年のキャンプ」に辿り着きました。
恥ずかしながら、PCの前で涙がこぼれてしまいました。
私はまだ40歳になったばかりで、子供もまだ小学生。キャンプに連れていき、焚き火の番をさせたりと、男としていろんな経験をさせたいと思っていますが…。昨今、便利道具が増えすぎていますよね。私自身が出来ないことを子供に求めることもできずに、ただただキャンプに連れて行っています。
時代が違うと言えば終わってしまいますが、へりさんの体験のように、心の奥深くに残るものを何か残してあげたいと思いました。
私も特別な経験をして育ったわけでもないので、自分も成長しなくては子供に教えることなど到底できないですよね。
普段はブロガーさまの記事にコメントなどしたことは無いのですが…気が付くとキーボードを叩いていました。
ありがとうございました。
なななんと申します。
キャンプで星空を撮りたいなと思い、「キャンプ写真入門:星空の撮影方法」が検索で出てきたので拝見させていただきました。
そこから・・・ひとつひとつ丁寧に説明された他の記事を読ませていただきながら、この「1978年のキャンプ」に辿り着きました。
恥ずかしながら、PCの前で涙がこぼれてしまいました。
私はまだ40歳になったばかりで、子供もまだ小学生。キャンプに連れていき、焚き火の番をさせたりと、男としていろんな経験をさせたいと思っていますが…。昨今、便利道具が増えすぎていますよね。私自身が出来ないことを子供に求めることもできずに、ただただキャンプに連れて行っています。
時代が違うと言えば終わってしまいますが、へりさんの体験のように、心の奥深くに残るものを何か残してあげたいと思いました。
私も特別な経験をして育ったわけでもないので、自分も成長しなくては子供に教えることなど到底できないですよね。
普段はブロガーさまの記事にコメントなどしたことは無いのですが…気が付くとキーボードを叩いていました。
ありがとうございました。
なななんさん
お子さんとキャンプできるのは今振り返れば本当に僅かな期間です。お子さんと楽しんで下さいネ。
大学生の長男は街で買物とかアーティストのライブ観戦とかが好きで、アウトドアには全く興味を示さなくなりました。「キャンプの何が楽しいのかが分からない」とも言います。
子供達の心にキャンプが残っているのかどうかも分からず、親の気持ちは中々伝わらないようです。でも私自身もそんな時期がありました。
将来、子供時代のキャンプを思い出しながら趣味にしてくれたら嬉しいですね。
初コメントありがとうございました。更新も少なく拙いブログで恐縮ですが今後ともよろしくお願いします。
お子さんとキャンプできるのは今振り返れば本当に僅かな期間です。お子さんと楽しんで下さいネ。
大学生の長男は街で買物とかアーティストのライブ観戦とかが好きで、アウトドアには全く興味を示さなくなりました。「キャンプの何が楽しいのかが分からない」とも言います。
子供達の心にキャンプが残っているのかどうかも分からず、親の気持ちは中々伝わらないようです。でも私自身もそんな時期がありました。
将来、子供時代のキャンプを思い出しながら趣味にしてくれたら嬉しいですね。
初コメントありがとうございました。更新も少なく拙いブログで恐縮ですが今後ともよろしくお願いします。